アニメ「妖逆門」を観た。
良い異種間友情があると以前から聞いていたので、軽い気持ちで1話を再生した。
1話時点では、正味「展開早いな」「優秀なホビアニ」「cv.小林由美子の少年主人公は素晴らしい」「怪しい人外がいるな、嬉しいな」くらいの浅い感想しかなく、のめりこむまでには至らなかった。いつから妖逆門の視聴に前のめりになったかは思い出せない。12話の時点でもうズブズブにのめり込んでいたことは確かだ。
先ほど、51話まで視聴した。1話を観た日から数えると15日かかった。
世間の評価は知らないが、私はこのアニメが大好きだ。
そういうことをだらだらと話すための記事である。
愛すべき名作
「妖逆門」のあらすじは下記の通り。
夏休み、小学5年生の多聞三志郎は家出に近い形で旅に出た先でピンチになったところを、個魔のフエに救われた。フエに逆日本という日本そっくりな異世界へ連れていかれた三志郎は、げえむ“妖逆門”にぷれい屋として参加し、妖怪を救うため優勝を目指す。(U-NEXTの配信ページから引用)
「妖逆門(ばけぎゃもん)」をU-NEXTで視聴 https://video-share.unext.jp/video/title/SID0295111?utm_source=copy&utm_medium=social&utm_campaign=nonad-sns
ざっくり言えば、主人公の多聞三志郎くんのひと夏の冒険譚である。
アニメ「妖逆門」は前半・後半で物語のトーンがパキッと変わる。
前半は日本各地の観光名所(の逆日本)でげえむが行われ、実際に存在する東京駅や大阪駅周辺、名古屋のナナちゃん人形などが描かれる。三志郎くんの新鮮な反応もあいまって、旅っていいなあ、と思わせてくれる。私もこのアニメを見ていて旅行に行きたくなった。
後半はげえむの性質が一変し、対撃(妖怪を戦わせるバトル)中心にシリアスなドラマが展開される。子どもたちの抱える問題や子どもたちの願いに対する深掘りがおこなわれ、そして、「妖逆門」は何なのかという謎が徐々に明らかになってゆく。これがかなり見応えがあって面白い。そのシリアスが極まったタイミングで息抜き的なトンチキ回が挟まれるようなちょっとヘンなところもある。最終回に向けてどんどんSEが増えていってほとんど歌詞が聞こえなくなったり。でもそれがこのアニメの愛嬌である。
SEのことを話したが、このアニメは全編、BGMやSEがデカい。SEの音量に合わせると会話が聞こえず、会話に合わせるとEDのイントロの爆音で殴られる。ちょっと不思議な音量バランスをしている。
ここには書かないが、他にもヘンなところはちょっとある。だが、そういった粗もひっくるめて、「妖逆門」は愛すべき平成の名作だと私は思う。
まず、このアニメの素直に好きなところ
このアニメの好きなところ。ストーリーと絵だ。
ストーリーについては他の章で語るとして、絵がとにかく好みだ。かわいい。
阿部智之さんのキャラクターデザインがとにかくかわいい。三志郎くんをはじめとした少年のデザインも、亜紀ちゃんや清ちゃん、きみどりなどの女の子も、プ二っとした質感がカワイイ。
そして「うしおととら」の藤田和日郎先生の妖怪デザインもいけている。焔斬のような王道にかっこいい妖怪から、鳥妖のようなかわいい系の妖怪まで幅広い。怖い妖怪はしっかり怖いし、キモめの妖怪はしっかりキモい。うしとらにもいた襖は相変わらず怖いし、くらぎは虫のキモいところを抽出したようなガテン系のキモ怖さで、中盤のラスボスを飾るのにふさわしい恐ろしい妖怪だった。くらぎ、本当に怖い。
個魔のデザインはどちらが担当なのかは分からないが、本当にグッドなキャラクターデザインだと思う。フエとナミさん、ウタさんのキャラデザが特にお気に入り。
作画もほとんど安定していた。誇張抜きに、じっと画面を見ているだけで幸せな気持ちになれた。
OPやED、アイキャッチもいい。OPは1回も飛ばさずに見続けた。
1つめのOP「メビウス」は曲も映像も好きだ。サビ前の部分が特にいい。主人公のパートナー枠なのにフエがサビ終盤まで出てこなくて三志郎くんの敵みたいな雰囲気で出てくるのも面白い。
EDはどれも印象的だけれど、ED1はかなり印象深い。リアルタイムで妖逆門は見ていなかったものの、次番組の「うえきの法則」を見るためにEDだけは目にしていた。ED1の映像と曲が怖かったことをなんとなく覚えている。ED4はご褒美のような映像で大好きだ。
アイキャッチも全部良い。お気に入りは2クール目と4クール目。私は異種間友情が好きなので、どうしても2クール目のフエと三志郎くんのコンビ感あふれるアイキャッチに喜んでしまう。4クール目のアイキャッチは最初に見た時に声が出たくらい良かった。
すごくつらつらと書いてしまったが、とにかく、絵がとてもいいということを言いたかった。
個魔とぷれい屋
妖逆門はげえむに参加する子ども(ぷれい屋)ひとりにパートナーの妖怪(個魔)がひとり付き添うシステムとなっている。異種間友情を求めて見始めた身としてはこれだけでもうお釣りが来るほどのありがたい設定である。
個魔は自分のぷれい屋にしか見えない設定となっているので主人公の三志郎くんの個魔であるフエ以外の個魔は露出が少なめだが、各コンビの魅力は少ないエピソードでもしっかり味わうことができる。(贅沢を言えば、前半に各コンビのエピソードをもっと見たかった)
フエと三志郎くんの話は書くことが多すぎるので次の章に預けるとして、ここでは他のコンビや個魔の設定について書きたい。
個魔は子どもたちの絶対的な味方だ。子どもたちのやることには異を唱えず、時には背中を押し、対撃では身を挺して子どもを守ってくれる。
とはいえ、子どもたちに対するスタンスは個魔それぞれだ。子どものことを肯定し優しい言葉をかける個魔が多いが、子どもに対して素っ気なかったり突き放すような言葉をかける個魔もいる。三志郎の個魔のフエ、清の個魔のナミさんが後者なのだが、個人的にはこの二組がとても好きだ。三志郎も清も優しい励ましで奮起するタイプではなく、むしろ厳しい言葉をかけられることで自分を奮い立てるタイプなので、子どもと個魔のやり方がぴったり噛み合っているのがいい。
お別れのエピソードも各のコンビで用意されている。これがすごくよかった。あっさりした明るい別れから、湿度の高い愛に満ちた会話まで、それぞれのコンビらしいお別れが描かれていた。ナミさんと清のお別れなどは泣いてしまった。
個魔とぷれい屋には「保護者」と「子ども」としての側面が強いので、異種間「友情」という言葉をそのまま当てはめるのはしっくり来ない部分もある。
異種間愛情と言ったほうが近いかもしれない。個魔がぷれい屋に向ける感情は親から子へ向ける愛情に近く、ぷれい屋の子どもたちが個魔に向ける信頼も子どもから保護者に対するものとよく似ている気がする。
※※※※※ここから下は終盤に関するネタバレがあります※※※※※
子どもたちの願い
子どもたちが叶えたい願いを巡るドラマも見応えがあった。
それぞれの願い事に優劣は無いが、そこに賭ける思いはそれぞれだ。
特に切実なものを挙げると、亜紀と修のふたりの願い事になる。
亜紀ちゃんはご両親が共働きにより多忙で、幼少期から寂しい思いをしてきた。「お金があれば両親は働かなくて済む」=「両親は自分のそばにいてくれるようになるはず」と考え、お金持ちになるために妖逆門に参加する。最初は自分の願いを「お金持ちになること」「幸せになること」と濁してきたが、彼女の本当の願いが後に明らかになる。亜紀ちゃんのことはほとんど親の気持ちになって見守っていた。お金持ちになっても彼女の願いは叶わないのかもしれない、と思いながら視聴していたが、38話や51話のような形で彼女の問題が着地しているのを観てとても嬉しい気持ちになった。
修は「泳げるようになる」という願いを叶えて、完璧な人間になろうとしていた。親からの抑圧を受けながらトラウマをも抱える修は、完璧になるために「他人と競争して勝つこと」を必要としてきたけれど、「自分自身(のトラウマ)と向き合うこと」が本当は必要なことだったのだと、げえむを通して気付くまでの過程がとても良かった。
妖逆門のげえむを終えた子どもたちは(一時的に)記憶を消されて、元の日常に帰る。個魔や仲間たちの記憶はなく、彼らを取り巻く環境は大きく変わらないけれど、妖逆門を通じて彼らの心は確かに成長したのだと描かれていたのもこのアニメの好きな点だ。
(最終盤で記憶は取り戻されるわけだが、それはそれとして好きな描写だった)
きみどり・ねいど・正人
34話で明らかになる妖逆門の秘密は心の底から驚かされた。言われてみればかなりあからさまな配置で、何で気付かなかったんだろう……私ってちゃんとこのアニメを観られてなかったのかな……と静かに反省した。
終盤のきみどりやねいど、正人にまつわる展開にはとても引き込まれた。きみどりも正人も寂しかったのだろうけど、正人は周りを見ようとしなかったし、きみどりは自分でものを考えるのをやめてしまっていた。それが二人の罪なんだろう。
最後のきみどりの姿は切なかった。正人は……ずっと逆日本にいたわけだけど、実際の身体はどうなっているんだろう……。
フエと三志郎
※オタクすぎる感想なので閲覧注意※
この二人についてはもう何から書けばいいかわからない。色々ありすぎて。
妖逆門を観た人はみんなそうだと思うが、私はこのコンビが大好きだ。キャラクターとしてフエも三志郎くんも同じくらい好きな上で、この二人の関係性がとてもとても好きだ。オタク年表を作るならば間違いなくこの二人のことを記すだろう。
ふたりが出会った1話から、フエは怪しいお兄さんだった。妖怪のみんなに「裏切り者」とか罵られているから、三志郎くんに手を貸したのも何か狙いがあってのことで、腹に一物抱えているのだろう。そして終盤で裏切ってくるのかもしれない。初見でそこまで想像させるくらいフエは怪しかった。なんかOPでも敵っぽく出てくるし。
序盤のフエは本当にずっと怪しくて、裏切りは秒読みだったように思える。無邪気で活発な三志郎くんと、”裏切り者”らしい怪しいお兄さんのフエ。フエは1話で三志郎くんに名前で呼べと言われたにもかかわらず、かたくなに名前で呼ぶことをせず、「ニイちゃん」と呼び続けていた。フエはこのように三志郎くんに対して一線を引いて距離を保っていたが、三志郎くんはフエを信頼しているらしかった。この一方通行感とつかず離れずの距離感がとてもいい。三志郎くんの影からぬっと出てくるフエという画も最高だ。対撃では身を挺して守ってもくれる。私は序盤で既に「いいものを見た」という多幸感に満たされていた。
それが一変したのが12話だ。
「三…」事件である。(私が勝手にそう呼んでいる)
迷いの霧から戻った三志郎くんに、フエが「さん……」と言いかけて、「ニイちゃん」と呼び直したという事件だ。三志郎くんはそれに気付かずに、フエの姿を見て嬉しそうにしていた。これを見た時、私は自宅の椅子から立ち上がり、キッチンへ続くドアを開け、閉め、ベッドへうつ伏せに倒れた。私は何を見せられたのだろうかと思った。
このシーンのフエは今までに見たことのないような嬉しそうな顔をしていた。だが、三志郎くんがそちらを向く前に、いつもの怪しげな薄笑いに戻っていた。
こいつは何なんだ?三志郎くんの名前を呼んでそんなに都合の悪いことがあるのか?喜んだ顔を見られるのがそんなにいやなのか?そもそもそんなに三志郎くんのことを心配していたのか、こいつは? 様々な疑問が頭を渦巻いた。
何もかも分からないが、フエは三志郎くんのことをかなり気に入っているし、気に掛けてもいることだけは分かった。これを契機に、フエの見方は180度変わってしまった。ミステリアスな裏切り人外お兄さんだったフエは、ひねくれ保護者お兄さんと化した。フエが対撃の最中にニヤニヤしながら三志郎くんに茶々を入れていても、内心ではこの人三志郎くんのことめっちゃ心配してるんだよな、と思うと言いようもない心持ちになった。声も心なしか柔らかくなってきている気がする。こちらの受け取り方が変わっただけで実際は何も変わっていないのかもしれないけれど、三志郎くんとのやりとりはだんだん柔らかくほぐれていったように感じた。
それから、18話の雷信さんへのぷれい屋自慢や、26話で「ニイちゃんをくれてやるわけにはいかないんでね」とかっこいいことを言いながら普通にくらぎに取り込まれる姿など、フエは面白いものをたくさん見せてくれた。
最初から順繰りに思い出してみると、三志郎くんからフエに対する態度に大きな変化は無かったように思える。最初からずっとフエを信頼して、旅の道連れとして親しみをもって接していた。(あんなに怪しいお兄さん、信頼していいの?と私は思っていた)視聴者には12話でフエの内心がばれているが、三志郎くんには見えていない。にも関わらず、三志郎くんはフエのことを心の底から信頼していた。三志郎くんはフエの表面上の態度や言葉ではなく、他のところでフエが信頼できる人物だということを承知していたのかもしれない。
一方で、げえむの中でフエに対して強がる三志郎くんの姿もよく見られた。5話の「諦めるな、元気出せ」をフエに強要するくだりや、14話でフエに褒められて調子に乗る姿からも、三志郎くんにとってフエがどんな存在だったかが窺える。
そして関係も深まってきた39話、フエと三志郎くんは離ればなれになる。この回で特筆すべき事項が多々あるが、まず、フエを叱りたい。再会後、フエは三志郎くんには聞こえない声で「よく頑張ったな、ニイちゃん」と呟くのである。そういうのはもっと大きな声で言いなさい。ニイちゃんまで届くように。でも聞かせる気もなかったんだろうな、フエのことだから。三志郎くんが頑張る姿をずっと見てたくせに……。なんなんだ……。
フエと離れてひとりで戦わなければならないとき、珍しく弱気な三志郎くんに「フエがいなきゃ何もできねえのか?」と一角が言葉をかけていたことも特筆すべき事項である。三志郎くんとフエは妖たちからそういう認識されているんだ、と笑顔になってしまった。再会したとき、フエがいるとわかって少し泣きそうになっている三志郎くんもとてもいじらしかった。
そして、47話から雲行きが怪しくなり始める。フエは三志郎くんに、鬼仮面のように個魔である自分を三志郎くんが取り込めば夜憧丸に対抗できると言う。三志郎くんはもちろん怒って突っぱねる。何言ってんだお前は……と私も呆れた。この時点でん?とは思った。そして、いつか一緒に旅をしようと約束をしたところで、こりゃ危ないな、と思った。
予感は的中した。
49話のことはちょっとまだ処理しきれていないのであまり書けない。
最後にフエが三志郎の名前を呼んだことや、三志郎くんが泣いてやめろと止めたこと、それをきかずに三志郎くんを説き伏せたフエのことは思い出せる。他にも何かすごいことを言っていた気もする。確かめたいけれどしばらく見返せる気がしない。見返したらまたここに何か書きたい。
このふたりに別れが訪れることは分かっていて、それを楽しみにしてもいた。(※別れること自体はいやなのだが、異種間コンビのお別れを見るのが私の趣味だ)妖逆門を勝ち抜いて願いを叶えた三志郎くんとフエの穏やかな別れを予想していた私には、刺激が強いお別れだった。
色々書いてみたが、二人の好きなところをちゃんと書けた気がしない。道中のだらっとした会話だとか、空気感だとか、話す時にめちゃくちゃ顔が近いところとか、フエがニイちゃんに向けるやさしい眼差しだとか、それに気付いていない三志郎くんとか、この二人のあらゆる面が好きだ。
51話を見終わった今の所感
51話の存在によって、妖逆門という物語は完膚なきまでに完結した。
妖逆門のげえむが終わった後の子どもたちの姿、きみどり(霊木)のその後、三志郎くんの新たな旅立ち(と、フエ)。これまでの物語の全てにアンサーを与える最終回だった。子どもたちや妖怪たち、そしてきみどりの物語に、きちんとピリオドを打ってくれたことが私には嬉しかった。
そして、フエの幻に語りかける三志郎くんの姿が何より嬉しかった。
4年の月日が経っても、フエの存在は三志郎くんの人生に大きな影を落としている。そのことが何よりも嬉しかった。49話の別れによってよるべなく漂っていた気持ちが着地したような気がした。だが、同時に、フエの不在を感じさせられるラストでもあった。この切ない余韻がいい。
最終回に向けて増え続けたOPのSEが最終回では消えたのも寂しかった。歌詞がよく聞こえるよ……。
過去の傷やシリアスなバックボーンを抱えていない三志郎くんが、誰よりげえむを楽しんで、周りに影響を与えながら駆け抜けていった。その姿を最後まで見届けることができて良かったと思う。
おわりに
これを書いている今も、良いアニメを見終えたときの満足感と虚脱感に襲われている。
すごくよいアニメだった。引越し作業の合間を縫って見ていたので生活が崩壊しかけたが、それだけ夢中になれるアニメに出会えたことは嬉しいことだ。
U-NEXT、妖逆門を配信してくれてありがとう。
妖逆門、ありがとう。

